ラーニングスペース
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「指示待ち社員をなんとかしたい」自発性を引き出す仕組み

いちいち言わなければ動かない部下
「これ、そろそろ気づいてほしいのに…」
「どうして言わないと動かないのだろう」
「毎回指示を出すのが、もう疲れてきた」
「やる気がないのだろうか」
こうした“指示疲れ”に悩む管理職は少なくない。部下の成長を願い、主体的に行動する姿を期待しているにもかかわらず、現場には「言われたことだけをやる」空気が蔓延している。自発的に考え、動く社員が少ないと、上司の負担は増し、チーム全体のスピードと士気も低下する。
その結果、上司がますます細かく指示を出すようになり、メンバーはさらに「待ち」の姿勢を強める──。こうして“指示待ちスパイラル”が形成されていくのだ。
なぜ人は「指示待ち」になるのか
「自発性がない=やる気がない」と誤解されがちだが、実際にはそう単純でもない。多くの場合、本人の内面では「自分で判断して間違えたらどうしよう」「余計なことをして怒られるのではないか」という「心理的なブレーキ」が働いている場合が多い。
また、心理的ブレーキを働かせるような、職場環境という側面も見落としてはならない。
- ・判断ミスへの恐れ
- ・先回りしすぎる上司
- ・失敗を許容しない職場
- ・自由に発言できる場がない
- ・目立ちたくないという意識の現れ
つまり、職場の空気が「指示を待ったほうが安全・安心」というメッセージを発している場合も多い。この状態では、どんなに「主体的に動け」と言葉で訴えても、行動変容は起きにくい。
自発性は「環境と関わり方」で育つ
「うちのチームは指示待ち体質で…」と嘆く前に考えたいのは、「自発性は環境と関わり方によって育つ」ということである。つまり、上司や職場環境が「考えてもよい」「決めてよい」「試してよい」「発言してよい」という環境を意図的に作ることで、チーム全体の行動パターンを変えることができる。環境が変われば、行動も変わるのである。
たとえば、「失敗を恐れず発言してよい」という雰囲気があるチームでは、自然と意見が出る。逆に、過去の発言を否定された経験があれば、人は無意識に“沈黙”を選ぶ。 つまり、自発性とは、環境と関わり方の掛け合わせで形成される“行動習慣”なのである。
自発性を育てる5つのしかけ
それでは、ここで具体的にどうすれば良いか、「自発性を育てる5つのしかけ」を紹介しよう。どれも有効な方法なので、ぜひ日常業務の中に取り入れていただきたい。
1. あえて“解答”を示さない
部下に相談されたとき、つい「こうしたほうがいい」と方向を示したくなる。 しかし、あえて答えを言わずに「君ならどう考える?」と質問を返してみよう。 この一言が、思考のスイッチを押すきっかけになる。 「尋ねれば正解がもらえる」という受け身の習慣を断ち切り、「自分の頭で考える力」を養う効果がある。
2.選択肢から選んでもらう
すべてを任せるのは不安でも、「A案とB案なら、どちらが良いと思う?」と選択の余地を与えるだけで、本人の中に「自分で選んだ感覚」が生まれる。 この小さな「自己決定の経験」が自信を育て、次の自発的な行動へとつながる。人は、自分で決めたことに対しては、「責任と意欲」を持つものだ。選択の機会は、単なる意思確認ではなく、自発性の芽を育てる重要な場である。
3.週に一度の提案の場を設ける
「今週の業務をより良くするには?」をテーマに、全員でアイデアを出す時間をつくる。どんな小さなことでも構わない。たとえば「この手順をまとめると効率が上がる」「この資料、共有フォルダに置いたほうがいい」など。自分の意見を形にして発言する経験が、当事者意識を強める。提案が採用されたときは、必ずチームで共有し、提案者を称える。「自分の声が職場を動かす」体験が、最も強力な自発性のエンジンになる。
4.部下の話をよく聴く
「指示待ちタイプ」の部下を持つ管理職は、往々にして“聴けていない”ことが多い。コミュニケーション不足によって部下が安心感を持てず、自分の意見を言うことをためらってしまうのだ。 自発性とは、受け入れてもらえているという“安心感”があって初めて発揮される。部下との距離ができてからでは、信頼を取り戻すのに時間がかかる。だからこそ、スタート段階で人間関係の土台を築いておくことが大切である。 具体的には、部下が報告や相談に来たとき、「今忙しいから後にして」と言っていないだろうか。たとえ短い時間でも、顔を上げて目を合わせる、手を止めて一言リアクションを返す——その小さな積み重ねが「話してもいいんだ」という安心につながる。 “聴く”ことは単なる情報収集ではない。相手の心を開き、自発性を引き出すための最も有効なマネジメント手法である。
5.報告の機会を「育成の場」に変える
「自主性を育てる=自由に任せること」と誤解されがちだが、仕事である以上、報告は欠かせない。進捗を上司に伝えることは基本であり、報告の場を“指導の場”として活用する意識が管理職には求められる。 「指示待ち」「受け身」タイプの社員に対しては、報告の時間を活かして「質問し」「考えさせる」。その中で、良い発想があればしっかりと褒め、採用できるアイデアは取り入れる。 こうしたやり取りを日常業務の中で繰り返すことで、部下は自ら動き、考える習慣を身につけていく。報告の場を単なる進捗確認ではなく、“成長の場”として設計することが、自発性を育てる上で極めて有効である。これまで述べてきたことと重複する部分もあるが、報告の場を育成の場にすることは、非常に有効なので、覚えておいていただきたい。
「指示待ち社員から自発的社員へ」
最後に、自発的に動く社員は一朝一夕で育つものではない。しかし、上司が環境を整え、関わり方を少しずつ変えるだけで、チーム全体の行動パターンは確実に変わる。重要なのは、「指示を待つのが安全」と思わせる空気を減らし、「考え、試し、発言してよい」と感じさせることだ。
部下の行動が変われば、上司の負担も減り、チーム全体の士気とスピードも上がる。指示待ち社員を嘆くのではなく、自発性を育む仕組みを意図的に設計する──それが、指示疲れから解放され、強いチームを作る第一歩である。
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