ラーニングスペース
LERNING SPACE
オンボーディングとは何か?

1. オンボーディングとは何か
オンボーディングとは、新入社員が職場に馴染むためのサポートのことである。言葉の由来は、乗り物に乗っていることを意味する「on-board」からきている。
入社初日から、新入社員は職場に溶け込もうと精一杯努力する。しかしそれでも、職場風土や人間関係、仕事に馴染めないことで、本来の能力を発揮することもできずに、早期離職してしまう人材も少なくない。
そこで、「オンボーディング」の概念を取り入れ、新しい仲間(新人)を、早く本当の意味での組織の一員となれるよう、会社風土・伝統・文化への理解、人間関係の構築、業務スキル習得までを含めた包括的な受け入れ体制を整えようとする動きが広まっている。
2. なぜ今、日本でオンボーディングが注目されるのか
オンボーディングという言葉自体は1970年代後半のアメリカで使われ始めた。しかし、日本で広く注目されるようになったのは2000年代以降である。グローバル化や外資系企業の人材戦略の影響により、「オンボーディング」という言葉で体系化されるようになった。
現代の企業環境は、とにかく変化が速い。テクノロジーの進化、社員一人ひとりの価値観の多様化、さらには昨今、顕著にみられる帰属意識の低下、オンライン業務の増加による社員間のコミュニケーション不足など、こうした条件の中で、新入社員が職場に適応し、早く戦力化することが求められる。
3. オンボーディングに含まれる3つの要素
3-1. 組織文化の理解
新入社員はまず、会社の理念や価値観、行動規範を理解する必要がある。会社風土への理解が薄かったり、ギャップや違和感を抱いたままでいると、その後の人間関係の構築や本人の成長にも関わる。早い段階で、対応していく必要がある。
3-2. 人間関係の構築
どんなに優秀な社員であっても、職場で孤立すれば能力は十分に発揮できない。人間関係の構築は、一度ギクシャクすると関係を修復するのに時間がかかる。早い段階で、良好な人間関係を構築することが理想だ。
ここでメンター制度や定期面談が威力を発揮する。心理的に安心できる関係を築くことが肝要である。
3-3. 業務スキルの習得
新入社員は思いもよらない小さな壁につまずく場合も多い。「こんなことを質問するのは恥ずかしい」という気持ちから、質問もできず、解決にも至らず、精神的に追いつめられるケースもある。進捗状況の確認や声かけをこまめに行い、「分からないことを素直に聞ける環境」をつくることが大切である。
また、業務スキルの習得には「教える側の姿勢」も大きく影響する。新人の理解度に合わせて段階的に説明する、実際の業務を通じて体験的に学ばせる、フィードバックを的確に行うなど、丁寧なサポートが求められる。
4. オンボーディングを成功させる3つのポイント
4-1. 体系的な計画を立てる
オンボーディングは、入社初日から3か月、6か月、1年といった期間を通して設計されるべきである。段階的に目標を設定し、スキル・知識・人間関係の強化を計画的に進めることが成功の鍵となる。
4-2. メンターや先輩のサポート
新入社員が安心して質問できる環境は整えたい。メンターは会社の文化や暗黙知を伝え、職場に馴染むためのサポートを心掛けたい。
4-3. 定期的なフォローアップ
面談やアンケートで新入社員の状態を確認し、必要に応じてフォローする。孤立や不安を早期に解消することで、定着率やモチベーションを向上させることができる。
5. オンボーディングの効果
オンボーディングを実施すれば、以下の効果が期待できる。
1)早期戦力化:入社直後から即戦力として業務に取り組める
2)離職率低下:職場への適応がスムーズになり、退職を防ぐ
3)組織文化の浸透:社員が会社の価値観を理解し、行動に反映する
4)チーム力向上:信頼関係が築かれ、協力体制が強化される
オンボーディングの導入は全社をあげて新入社員の育成に取り組むこととなり、それは「人を大切にする風土」が培われる土台となる。
また、オンボーディングを行うことで、教える側の意識も変わる。先輩社員や上司が「育てる」という視点を持つようになり、組織内のコミュニケーションが活性化する。結果として、一体感が生まれ、既存社員のエンゲージメント(組織への貢献意欲)も高まる。
6. オンボーディング構築の際に注意したいこと
オンボーディングという言葉は新しいが、概念としては、総合的な新入社員支援だ。
言葉の響きから、体系化とシステムの構築に力を入れすぎてしまう傾向には注意が必要だ。各部署で膨大なチェックリストを作成する企業もあるが、業務自体が煩雑になり、継続的に実行することが難しくなる場合は本末転倒である。
重要なのは、形だけの取り組みにならないことだ。オンボーディングは単なる手順書ではなく、新入社員が安心して学び、成長し、組織の一員として活躍できるための環境づくりである。
資料請求、お問い合わせ

 
		